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『Digital Youth Award』での最終プレゼンの様子。大学生や社会人などから1000以上の応募があった中で、アイデア部門でグランプリを獲得。「実はこの日に学校で、卒業写真の撮影があったんです。だから僕、右上に別枠で載る人になっちゃいました(笑)」と吉田さん。このエピソードはプレゼンテーションでも披露して、笑いを誘ったそうだ。
当たり前なことこそ、意識して大切にする
小さいころから工作が好きで、少しませた子どもだったように思います。小学校高学年からすでに、将来について漠然と展望がありました。それは、「高校を卒業したらすぐ就職をして、工場でモノづくりをする」ということ。中学では新たにデザインの領域に関心を持ちましたが、それも「仕事をしながら勉強すればいい」と考えていました。両親も高卒で就職していた影響もあってか、自分の中で無意識的に“学問”より“実務”に重きを置いていたのかもしれません。僕はそう遠くない就職を見すえて、地元の工業高校に進学しました。
大きな転機は、高校3年になる前の、春休みに訪れました。学校の先生の勧めで、『リーダーズキャンプ』というイベントに友達と参加することになったのです。このイベントは、文部科学省の「東日本大震災からの復興を担う専門人材育成支援事業」の一環として催されており、3泊4日の合宿形式でスマートフォンアプリの開発に関する企画演習を行うものでした。テーマは「スマホとクルマ」。若者の過度な車離れの解消を目的としたアプリを、即席で結成されたチームで考えたのです。
そこで出会った先輩から多くを学ばせていただきました。その先輩は僕がいたチームのリーダーだったのですが、今まで出会った人の中で一番と言ってもいいほど、人の話を聞くのがうまい人で。彼は相手の考えを十二分に引き出して、それを自分の発言やチームのアイデアに着実に反映していきました。当たり前のことかもしれませんが、これまでモノと向き合うことの方が多いコミュニティにいた僕にとって、その姿勢はとても輝いて見えたんです。コミュニケーションというのは、ただ単にお互いが言いたいことを言い合うのではなく、相手の思考と真正面から真摯に向き合うことだと、あらためて気づかされて。また、真摯に向き合うだけでなく、それをちゃんと態度に示すことが大切だということも、併せて学びました。
リーダーズキャンプを契機に、僕は徐々に自分の心境の変化を感じました。「進学して、もっと勉強したい」という気持ちが、段々と膨らんでいったのです。3年になってすでに進学クラスと就職クラスは分けられており、今さら進路を変えるのは無理かなとも思いました。しかしあきらめきれず、3年の6月ごろ、意を決して先生に「専門学校に行こうと考えているのですが…」と話したら、「お前の評定なら推薦が出せる。大学も視野に入れたらどうだ?」と勧めてくれて。両親も、僕が「大学に行きたい」と言ったら、「好きなようにしたらいいよ」と後押しをしてくれました。それがものすごく、うれしかったです。周りの厚意と支えのおかげで、僕の視界は大きく開けました。
それから、僕の高校生活はいっそう濃く充実したものとなりました。進学してから苦労しないように、塾に通ったりデッサンの勉強をしたり。そして、高校3年の冬に『Digital Youth Award(DYA)』の開催を知ったんです。
DYAは18~29歳の若年層を対象にした、ウィンドウズ8のアプリ開発のコンテストです。「人が豊かになる国民的アプリ」がテーマでした。このイベントを知ったキッカケは、Facebookでのつながり。リーダーズキャンプで座学の講師を務めていた方がFacebookで紹介していたんです。僕は、あそこで培った知識や経験を試そうと思い、参加を決意しました。
僕が提案したのは「ジャパニコーゼ」というアプリで、日本全国の高齢者に各地の旅行ガイドになってもらって、海外旅行の集客率アップを目指す企画。日本の高齢化問題をポジティブに捉え、高齢者の知識や経験を有効活用するためのアプリをデザインしました。
このDYAに向けての活動を通して、「自分の考えを正確に分析して認識することの難しさ」を知りました。自分がどんなことを問題と捉えていて、どんなことを人に伝えたいと思っているのか。それを限られた時間の中で、どうすれば無駄なく正確に伝えられるか…周りのアドバイスから、それまで組み立てていた自分の思考プロセスの甘さが露呈されていきました。とりわけ、今までどれほど自分勝手に企画書やプレゼンテーションの原稿を書いてきたかを、身に染みて感じましたね。資料を読む人、発表を聞く人の立場になって考えることが重要なんだ、と。そういう当たり前のことを、社会の一線で活躍する方々は誰よりも大切にしているということが、いろいろな大人の方から話を聞いて印象に残りました。最終的にDYAではアイデア発想部門でグランプリを獲得。しかし、自分にとってはその結果自体よりも、ここに至るまでに頂いた数多くの助言や懇意こそが、何よりの宝物です。
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自分の世界の主人公は、やっぱり自分でしかない
僕には、自信を持って「これが自分の軸だ!」と呼べる方向性が、明確にありません。だからこそ、これからの大学生活では、勉強の優先順位が一番だということを忘れないように心がけていきたいです。興味は限りなく、東京の大学に出てきてから出合うものは真新しく面白そうなものばかりですが、デザインの勉強をおろそかにすることだけは、絶対にないようにしたいなと。地道な座学は時に面倒だと感じることもありますが、「面倒くさいと思ったことこそ、積極的にやる」と心に決めています。これまでの短い経験則ですが、面倒なことほど、自分の力になるものはありません。
漠然としていますが、将来的にはアップル社の製品のように、人のライフスタイルを劇的に変えられるようなプロダクトを作りたいです。「モノとコト」――製品とそれを使う生活、トータルでデザインができるように、いろいろなことを学んでいきたいと思っています。
東京に出てきて、大学でたくさんの学生を見て、まだまだ未熟ながらに強く感じたことがあります。それは、「自分が主人公だ」と思うことの大切さです。中学生のころから、僕は何かをしようとする時に、よく「もし自分がマンガの主人公だったら…」と考えていました。少し言葉を換えれば、「今、自分がしていることを、人に自信を持ってアピールできるかどうか」ということでしょうか。そしたら、このゴミは拾うだろう、このテストは頑張るだろう…というように、自分の行動の指標になっていきましたね。
大学には、社会には、スゴイ人たちがあふれています。自分がとてもちっぽけで、取るに足りない存在のように感じてしまう。でも、自分の世界の主人公は、やっぱり自分しかあり得ないし、僕は僕のヒーローでいたいと思うんです。
これからもっと自分らしくいられるよう努力して、周りの人たちを常にワクワクさせられるような主人公になります!
吉田さんに10の質問
Q1. 好きな異性のタイプは?
どれだけ親しくなっても、きちんと相手への思いやりと、尊重の意識を忘れない人。
Q2. 好きな食べ物は?
なんでもおいしく頂きますが、特に寮のご飯が好きです! コンビニ弁当のように味つけは濃くないですし野菜もちゃんと取れますから。作った人がそこにいるので、ご飯を多く盛ってもらったり、コミュニケーションをとりながら食べられるのはうれしいですね。
Q3. 好きな映画は?
『サンキュー・スモーキング』というコメディ映画です。たばこに翻弄された男の描かれ方がすごく印象に残っています。
Q4.好きな音楽は?
ネットラップをよく聴きます。その中でも「らっぷびと」というラッパーが好きですね。ほかにはSOUL’D OUTや、いとうせいこうをメインに聴きます。
Q5. 趣味は?
アイデア発想、模型鑑賞、ミニ四駆、サイクリングなど。特にミニ四駆づくりには、思い入れがあります。地元でミニ四駆のレースや走行会などを行うチームにも所属しているんです。先輩レーサーの方々にアドバイスをもらいながら少しずつ進化させているマシンは、常に自分の集大成です。
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Q6.宝物は?
積み重ねてきた知識と、それを存分に活用するための知恵。そして、それらをもたらしてくれたすべての方々です。
Q7. 座右の銘は?
「我以外、皆、我が師なり」。作家の吉川英治さんの言葉です。
Q8. もし過去に行けるとしたら何をする?
昔の自分に、「もっと勉強しとけ!」って言います。まったく意味がないと思いますけど(笑)。
Q9. 100万円を自由に使えるとしたら?
自分の趣味に関係するイベントや大会を開催してみたいですね。
Q10.今、一番会いたい人物は?
デザイナーの根津孝太さん。デザインやモノづくり、そして人に対する姿勢がめちゃくちゃカッコイイんです!
一日のスケジュール
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取材・文/西山武志 撮影/刑部友康