「環境に興味のある大学生が集まり、発表・交流・学習する場」という理念のもとに開催されるecocon。グランプリをとった第12回には32団体が参加。6チームでの予選を勝ち抜き、さらに6チームで戦う決勝へ。見事グランプリを勝ち取った。
1年生のイベントで思うような結果を残せず、くやしい気持ちを持ち続ける
僕の所属するサークル「GECS(ゲックス)」とは、Gaidai Eco ChallengerSの略。「Gaidai」とは大阪大学と合併した旧大阪外国語大学の略称「外大(Gaidai)」で、もともとは大阪外大のあるゼミでの活動から始まった環境問題に取り組むサークルです。僕は環境やエコに関心が高いわけでもなく、学部で仲良くなった友人から、大学公認の環境サークルに入らないかと誘われ、軽い気持ちで入会したというのが経緯です。
正直、ボランティアにかかわる人って真面目そうな人ばかりかなと思っていたのですが、GECSは真面目な人やノリのいい人、オシャレな人、女性も多いなど想像していたものとは違いました。いろいろな人がいて、だからこそ、いい刺激を受けられるだろうと感じました。GECSは各テーマを持った7つの班(現在は6つ)に分かれて活動します。1年生は班活動の進め方や意見の出し方、議事録や企画書の書き方などを学ぶため、班の所属が決まる前にまずは、1年生だけで企画から実行までを行う川清掃イベントを担当。当時、同期は50人ぐらいいたのですが、イベントの企画、広報、アイスブレイク(※1)のためのレクリエーション担当などの5つの班と各班長からなる実行委員会に分かれて活動します。僕は広報班に所属し、僕を含めた11人の仲間とイベントをより多くの方に知ってもらい参加申し込みをしてもらうための活動を進めました。
(※1)初対面の人同士が緊張をほぐしコミュニケーションを取りやすくするための手法
僕たちがイベントを行った川は、大阪府北部の国定公園・箕面公園内を流れる箕面川。初夏にはホタルが飛ぶ姿が見られるなど美しい川です。その環境を維持するために、参加者の方と楽しみながら清掃を行います。広報班が行ったことはビラ配布のほか、地域のコミュニティーラジオ局やケーブルテレビの番組内宣伝のための仕掛けづくり、ロータリークラブなどの団体でのPR。もともとGECSは箕面市とかかわりを持っていたので、箕面市役所や箕面市教育委員会の後援を受け、PR活動に協力してくれる企業や団体を紹介してもらいました。
1年上の先輩の川清掃イベントでは、110人以上の方が参加。その人数を上回ることを目標にしていましたが、結果は70人の参加。くやしい気持ちとともに、広報としての至らなさを痛感。同期の仲間に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
川清掃イベントが終了した9月、3年生が引退するとともに僕たち1年生が班に所属。入りたい班の希望を出すのですが、友人と共にMcK班を選びました。McK班はゴミのポイ捨てや不分別、ゴミ排出量削減など、街をきれいにするために活動します。具体的には、大学近くの石橋商店街周辺で毎週ゴミ拾いを行ったり、タバコのポイ捨て調査、学祭での学生に向けた学内分煙周知など。まずは、先輩についてゴミを拾うことから始めます。
ただ、班の方針は、ゴミ拾いという瞬間的なものではなく、ゴミを捨てる人が減るという社会貢献につながる活動でなければならないということ。そこで、石橋駅周辺を7つのエリアに分け、週1回のゴミ拾いで、エリアごとにタバコの吸い殻本数と拾ったゴミの総重量を記録。ゴミの多い場所やゴミの中身などを分析することで、対策を考えることにしました。タバコの本数は拾いながら数えるというアナログな方法。普段、意識していないと気づかないのですが、草の茂みや溝などにゴミは落ちているもので、驚きの連続でした。
ゴミ拾いと並行して、10月から全国大学生環境活動コンテスト(ecocon)の準備が始まりました。僕の担当は、先輩2人と3人で プレゼンする内容や方法を考えること。ただ、McK班として活動を始めたばかりだったので、何をアピールすべきなのか、何を評価してもらいたいのか、それすらも見えていない状況でした。12月にecoconに参加し、予選2位で敗退しましたが、今考えても自分が何をしたのかはよくわかりません。ただ、その反省の気持ちが次年のグランプリへとつながっていると思います。
McK班は、3月から8月までと9月から2月までの前後期に分けて活動。 2013年3月から14年度の活動が始まりました。数カ月後に3年生が引退、1年生も加わるため、2年生である僕たちが主導していかなければなりません。新しい年度になってまず班で話し合ったことは、ゴミ収集の蓄積データをどう活用するか。その答えを見つけるために、勉強会を実施しました。例えば、「シンガポールはなぜ、ゴミが少ないのか」とか、環境犯罪学の「割れ窓理論(※2)」などが題材。さらに、ゴミ拾いを実施する街について知ることも必要だと思い、石橋駅周辺のゴミ箱の位置や喫煙の多い場所などを地図に落とし込んでいきました。
(※2)アメリカのジョージ・ケリング博士が提唱。建物の窓ガラスが割れたまま放置されていると、管理人がいないと思われ、凶悪な犯罪が増えるという理論。
ゴミ拾いを続ける中、場所の問題でポイ捨てが減らないことに気づきました。特に目立ったのが、踏切横の溝へのタバコのポイ捨て。溝をフタでふさげばポイ捨てが減るだろうと池田市に提案したのですが、そう簡単には進みません。というのも、踏切横の敷地は市ではなく電鉄会社の所有であること、溝にフタをすることで自転車がとめやすくなり放置自転車が増える可能性があること、フタの上にタバコをポイ捨てすることで火事の危険性があることなど。 ポイ捨て対策、ゴミ削減といっても、さまざまな側面に配慮しながら方法を講じなければならないことを痛感しました。
この踏切横のポイ捨ては解決へと進めたかったので、班で何度もミーティング。そこで出てきたのが、溝にフタをして、その上にタバコ専用のゴミ箱を設置する企画。7月に企画書を池田市に提出し、市から電鉄会社に企画を伝えてもらい、翌月にはその企画が採用され、実行に移していただくことになりました。しかし、ゴミ箱を設置すると火災原因、いたずらなどのリスクもあったため、ポイ捨ての多い踏切近くの一部だけにフタをするという対策を取ることに。 多い時に450本あったポイ捨てが100~200本ぐらいに減りました。
ゴミ削減という成果をアピールし、ecoconで念願のグランプリを受賞
8月になると3年生の先輩が引退し、9月から1年生が班活動に参加。僕は副班長として、班の意見をまとめる役割に。班としてゴミ拾いを継続する中、新たに対策すべき場所として、駅前の高架下にある建物と建物のすき間が挙がりました。人目につかず、雨風もよけられるすき間でタバコを吸って、そのままポイ捨てする人が多い場所です。そこで、今回もポイ捨て対策を企画書としてまとめ、市と建物を所有する企業に提案。その対策とは、すき間にフェンスを設置し、人を入れなくするというものですが、見た目がよくない点や、もしボヤが起きたときにすぐに火を消せないなどの問題を指摘され、市からは却下されてしまって…。しかし、逆に企業側からすき間の奥から手前をコンクリートで斜面状に固める工事を提案されました。斜面だとバランスが悪く、外からポイ捨てされても斜面をころがって手前に落ちてくることなどの利点があったからです。企画が採用されなくても、僕たちが提案したことをきっかけに企業が動き、結果、ポイ捨て対策を実現することにつながりうれしかったです。
10月になると、ecoconに向けての準備がスタート。メンバーも一致団結し、ecoconに向けて動いていた矢先、班長がサークルを脱退。僕が班長を引き継ぐことになりました。班長になってまず、みんなに伝えたことは、「ゴミ拾いやデータ蓄積という形だけではなく、実際にゴミを減らすための対策こそ大事。かつ、一過性のものではなく継続してゴミが減り続けることを大切にしよう」ということでした。あわせて、まわりの友人たちの「単なるゴミ拾いでしょ? 何でそんなことをやっているの?」という理解不足や意識を変えるために、ポスターを掲示し、認知活動も行いました。
ecoconに対しては、前年のくやしさも含め、冗談半分に優勝しようと言いながら士気を高めました。1年前とやっていることは変わらないのですが、参加した当時のecoconの「刺激と変革」というテーマを受け、実際にゴミが削減したという成果をアピールすることにしました。 具体的には、7つのエリアごとに担当を決め、担当はエリアのゴミやポイ捨て状況に精通するよう改善。週1回のゴミ拾いによる集計で成果を明確にすること。重点対策が必要な場所に対してポイ捨て削減へとつなげる提案をすること。さらにサークル活動の継続性を重視し、1年生に担当がエリア案内や特徴を細かく伝え理解を深めること、などを盛り込みました。
そして、大学2年12月、予選を突破し、6団体での決勝へ。ほかの団体のプレゼンは、海岸のクリーンアップイベントで100名を集めたとか、農家とコラボし形の悪い野菜をスイーツに作りかえて販売するとか、すごくレベルが高く感じました。それに比べ、僕たちの活動は石橋駅周辺とエリアも規模も小さく、派手なパフォーマンスもありません。決勝に残っただけでも良かった、と思っていたらグランプリをとることができたんです。正直、驚きました。
審査員から評価されたのは、「昨年と同様の活動で、その違いを明確にしていること。そして、活動するだけでなく成果を上げていること。1年生への導入という継続性を重視していること」でした。そういえば、プレゼン後の質疑応答で「活動するうえで一番、大切にしていることは?」と聞かれ、他団体が仲間とかつながりというキーワードを挙げる中で、僕は「成果が大事」、後輩も「(成果を上げるための)データが大事」と答えたのです。もちろん、仲間もつながりも大切なのですが、それだけではただのお祭り。環境サークルとして、きちんとした成果を上げることこそが僕たちがすべきことなのだと、あらためて思いました。
ゴミを捨てにくい環境づくり、捨てなくてもいい環境づくり、そして、ゴミを捨てる人の意識を変えること。この3つを進めていくことで、ゴミやポイ捨てが減るんだと思ってます。僕たちの現段階での活動は、捨てにくい環境づくりやゴミ箱設置など捨てなくてもいい環境づくりの段階。ですが、今後は3つ目の意識改革へと力を注ぐべきだと思っています。具体的には、15年9月中旬には、「日本スポーツGOMI拾い連盟」の協力のもと、ゴミの量と質でポイントを競い合うスポーツゴミ拾い大会を開催予定。僕は9月でサークルを引退しますが、 後輩たちに引き継ぎ、他団体や企業、行政などに働きかけ、ゴミを捨てない意識を根付かせていくつもりです。
長谷部さんに10の質問
Q1.長所は?
人のいいところを見つけられること。仲良くなれた人には、裏表なく深く付き合うことができます。
Q2.短所だと思うところは?
仲良くなった人には礼儀を忘れてしまうこと。反対に初対面の人などに対しては反応を気にしすぎてしまうところがあります。
Q3.尊敬する人は?
野球界ではイチロー、高校時代にやっていた弓道では師範を尊敬していますが、人生の中でこんな人になりたいと思う人はいません。自分自身がどうなりたいかが、まだ見えていないからかもしれませんが。
Q4.宝物は?
2014年のecoconでグランプリを獲得した時の優勝盾。今でも優勝盾を見ると、自分たちの行動は社会の役に立つんだとやる気がわいてきます。
Q5.好きな食べ物は?
鶏卵や明太子、イクラ…ありとあらゆる卵が大好きです。
Q6.会いたい人は?
女優の篠原涼子さん。僕が子どもっぽい性格なので、許容して理解してくれる大人の女性という感じが好きです。
Q7.行ってみたい国は?
ドイツに行きたいです。街並みがきれいだし、医学分野や車などの産業の先進国の現状や環境対策を見てみたいです。ビールが安いのもうれしいですね。
Q8.これからやってみたいことは?
いろいろなアルバイトをやってみたいです。1年の時に居酒屋のホールを経験しましたが、学生のうちにさまざまな経験を積んでみたいです。
Q9.趣味は?
映画観賞。最近はなかなか行けませんが、時間があれば映画館でゆっくり映画を見たいです。最近のお気に入りは『イニシエーション・ラブ』。
Q10.好きな音楽は?
邦楽ロックが好きです。特に、「ゆず」のファンです。
一日のスケジュール

取材・文/森下裕美子 撮影/笹木 淳