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慶應義塾大学 礒尾奈加子さん

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いそお・なかこ●1995年長野県生まれ。中学進学時に単身オーストラリアに渡り現地の学校に通う。帰国後の2011年、東京の高校で新聞部を新設し著名人のインタビューを行いつつ、友人有志と共に学生団体「Ihatov(イーハトーブ)」を立ち上げ学生向けのチャリティーイベントやセミナーなどを企画。12年には音楽フェスティバル「ROCK GOD DAM 2012」、13年には「ROCK GOD DAM 2013」を主催し、企画・出演交渉・広報宣伝などを手がける。14年4月、慶應義塾大学環境情報学部に進学。現在は自身も出演している映画『優しさと泪と』(年内に劇場公開予定)の制作支援を行うかたわら、次の「ROCK GOD DAM」を企画中。

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2013年、渋谷で開催した「ROCK GOD DAM 2013」より、「Suburban Living」というアメリカから初来日したロックバンドの演奏シーン。礒尾さんは自分の好きなバンドにメールやFacebookのメッセージで出演オファーをして、3カ国から計4バンドの招致に成功した。

学校に意義を見いだせなかった小学校時代

「音楽との出合いはいつ?」ってよく聞かれるんですが、正直に言うと、自分でもよくわからないんですよね。ただ、なんとなく8歳の時から、ビートルズやニール・ヤングが好きになって、音楽雑誌の『rockin’on』を自分で買いに行ったりするようになっていたんです。親が音楽好きというわけでも、ラジオをよく聞いていたわけでもなくて…自分でもなんでこんなにロックが好きになったのか不思議なくらいです(笑)。

 

思えば小学校の時から、自宅以外の場所では得体のしれない居心地の悪さを感じていました。本当に子どもらしくないのですが、「何のために生きてるんだろう?」「学校の勉強って何の役に立つんだろう?」とか、常日ごろから考えていたんです。授業に意義を見いだせなくて、登校しても図書室に一日中いることもよくありました。図書室の本は手当たり次第読みましたが、その中でも宮沢賢治さんの作品が一番心に残っていて、今でもたまに読み返すことがあります。そんな生活をしていた私の心に、ロックはすっと寄り添ってくれたんです。学年が上がるにつれてだんだんと学校にも行かなくなったんですが、拠り所があったおかげか、そこまで悲観的にはなりませんでした。

 

中学在籍中に環境を変えてみようと思い立ち、そこから1人でオーストラリアに飛び立って、現地の学校に通い始めました。向こうでの生活はとても刺激的でした。いろいろな人種の人がいて、いろいろな価値観を持っていて…ごく当たり前なのですが「みんなそれぞれに違っていて、それでいいんだ」と実感できたことで、すっと肩の荷が下りたような気がしました。

 

オーストラリアには3年弱滞在し、帰国後は通信制の高校に。この高校を選んだのは、校長先生の著作を読んだことがきっかけです。そこには「いろいろな生徒がいていい」「今の姿が、その人本来の姿とは限らない」など当時の私に響く言葉が並んでいて、「ここなら自分が、自分らしく勉強できるかもしれない」と感じ、入学を決意。課外活動を幅広く認めて応援してくれる学校だったので、私は新聞部を作って著名人や大学教授へのインタビューをし、記事にする活動を始めたんです。

 

そこからどんどん学校外のつながりが広がっていって、ほかの高校に通っている友人と一緒に「Ihatov(イーハトーブ)」という学生団体を立ち上げることに。「何か大きなことを成し遂げたい」という曖昧なモチベーションでスタートした団体でしたが、東日本大震災の復興に携わるNPOへの募金を集めるチャリティーイベントや、高校生が「大学とはどんな場所なのか?」ということを学べるようなセミナーを主催するなど、実のある活動を展開することができました。

 

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責任感と好奇心で実現させた、ロック・フェスの開催

私にとって最大の転機は、高校2年の時に訪れました。学生団体の活動で付き合いのあったNPOの方が「一緒に音楽フェスを企画しないか?」というオファーを、私個人にしてくださったんです。今まで単なる“好き”の対象でしかなかった音楽の世界に自分が携われるんだと、すごくワクワクしましたね。

 

しかし、ここからは波乱の連続でした。フェスの開催日程や会場が決まった矢先、そのNPOが解散してしまったんです。事実上、この企画に残されたのは私1人。でも、ここで「中止する」という選択肢は、私の中にありませんでした。「外部で協力してくれている人がいるのに、今さらやめることなんてできない」という責任感と、「好きなものに携われるチャンスを無駄にしたくない」という好奇心が、立ち止まることを許さなかったんだと思います。

 

メディアでは 「高校生が音楽フェスを1人で主催した」と表現されることが多いのですが、実際は周りの方々に助けてもらってばかりでした。ライブ会場のオーナーさんにアドバイスをもらいながら手探りでバンドへの出演依頼やタイムテーブルの作成をしたり、友人にホームページの制作をお願いしたり…サポートしてくれる人たちがいたおかげで、「ROCK GOD DAM 2012」を無事に開催することができたんです。「誰かに頼むよりも1人でやった方が楽」なんてことを思っていた、当時の自分を叱ってあげたいですね。

 

あまりにも激務だったので、その翌年に「ROCK GOD DAM 2013」を主催するなんてことは、正直まったく考えていなかったんですよ。ただ偶然にもこの年に、私が大好きなドイツのバンドが新しいアルバムをリリースしていて。その内容がとても素晴らしく、どうしても感動したことを伝えたいと思って、そのバンドにFacebookでメッセージを送ったんです。その際、「私は日本の高校生で、去年音楽フェスを企画しました」ということも書いておいたんですね。そしたら、本人から返信が来て「面白いね! じゃあ、そのフェス出るよ!」って言ってくれて。最初は冗談かと思ったんですが、向こうはすぐに渡航費を集め始めてくださったんです。

 

「憧れのバンドが、自分の企画するフェスのために、わざわざ海外からやってくる」なんてことになったら、もうやるしかないじゃないですか(笑)。そんな縁があって、2013年も開催することにしたんです。前年度の経験があった分いくらか勝手はわかっていたのですが、2度目のフェスでは2日間で、ドイツ・アメリカ・ギリシャから4組の海外アーティストを招致するという大がかりなものになったので、その準備や対応は前年よりも大変でした。心残りなのは、大好きなバンド・大好きなロックにあふれたイベントだったにもかかわらず、2回とも自ら楽しめる余裕がまったくなかったことですね(笑)。それでも、このフェスを成功させたことは、自分にとって大きな自信となりました。

 

大学進学にあたっては、「何かしら“手に職”となるような技術を身につけたい」と考えていました。どんな技術がいいかと検討して、思い当たったのが映像制作です。昔から映画もよく見ていて、自分でも作ってみたいと考えていたんです。SFCを志望したのは、映像作りに携わるために幅広い知識を習得したかったから。受験ではAO入試を利用しました。面接の際にはフェスをやってきたことは一切話さず、「この先何がしたいのか」「そのために自分には何が必要で、ここで何を学びたいのか」という点に絞って話をしました。親しい先輩にSFCの方々がいて、いろいろとアドバイスを頂けたおかげで、受験は無事に合格できました。

 

大学では1年次なので基礎的な内容がほとんどですが、これから映像制作のいろはや、最先端のコンピューターミュージックについて、深く勉強していきたいと思っています。そして、早々に映画制作のプロジェクトにも参加させていただけているので、私にできる力を尽くして、いい作品にしていきたいです。

 

また、次の「ROCK GOD DAM」は、台湾での開催を視野に入れて話を進めているんです。2013年のフェスに来てくれた人の中に、台湾で有名なバンドのメンバーがいて、その方が終わった後にメールをくださって…。詳細はまだ言えませんが、2015年までには実現させられるよう頑張ります!

 

短いながら、これまでの自分の人生を振り返ると「他人と比較しないで、自分らしくいればいい」ということは切実に感じています。中学で海外に出るまでは、私は周りの子と自分を比較して「自分がダメな人間なんじゃないか…」とずっと悩んでいました。でも、比較して落ちこんだところで、何もいいことはありません。むしろ、人と違う部分こそ、自分らしさを発揮できる長所になるはず。そういう面と向き合って、自分の感覚に素直に行動することで、自ずと道が開けてくるんじゃないかなと思っています。

 

礒尾さんに10の質問

Q1.好きな異性のタイプは?

いろいろな話ができる人がいいなと思います。知識的なことよりも、今まで何をやってきたのかという過去の話を楽しく聞かせてくれる人にひかれます。

Q2.好きな食べ物は?

甘いもの全般に目がないです。特に、チョコレートケーキが好き。不二家のチョコレートケーキは、近所に店があったのでよく食べていました。

Q3.好きな映画は?

スタンリー・キューブリック監督の作品がすごく好きで、『時計じかけのオレンジ』が一番のお気に入り。暴力性の高い内容を上質なエンタテインメントとして表現している点が、本当にすごいなと感じます。

Q4.好きな音楽は?

この世にあるすべての音楽です。ロックにもクラシックにも民族音楽にも、それぞれのよさがあるので、甲乙なんてつけられない。最近は夢幻的で浮遊感のある音が特徴の“シューゲイザー”というジャンルの音楽に注目しています。

Q5.趣味は?

映画鑑賞です。昔から映画はよく見ていました。今、映画の制作に携わることができて、とても楽しいです!
写真は現在私が監督をつとめている自主制作映画の撮影中の一コマです。

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Q6.宝物は?

これまで歩んできた、18年間の経験です。

Q7.座右の銘は?

座右の銘とはちょっとズレているかもしれませんが、いくつかの選択肢で迷っているときには「どちらがよりロックか?」という判断基準で選んでいます。

Q8.最近気になっていることは?

キャンパスの敷地内に牧場があって、かなり臭うんですよね…。自然豊かで素敵な場所なんですが、その点はどうにかならないかなと…(笑)。

Q9.タイムマシンができたら、どこに行く?

1990年代のシアトル。“グランジ”というロックのジャンルが最も隆盛した場所で、当時の熱を肌で感じてみたいです。

Q10.今、一番会いたい人物は?

ミュージシャンのニール・ヤングさん。私にロックの素晴らしさを教えてくれた人なので、ひと言お礼が言いたいです。

 

一日のスケジュール

on
6:00 起床。かかわっているプロジェクトなど業務関連のメール対応を済ます。
7:00 パンに目玉焼きやサラダなど、簡単に朝食を作って食べて、身支度を整える。
8:30 家を出て学校へ。午前中から授業がない日でもこの時間に学校に行き、図書室で勉強をする。
9:00 授業を受ける。「映画制作や音楽制作など、クリエイティブなことに触れられる授業が多くて、ワクワクしています」。
16:00 その日の授業を終えて、学校をあとにする。
17:00 映画制作やそのほかに携わっているプロジェクトの打ち合わせ。映画の方では資金集めにも協力しているので、企業の方と話すことも。
18:30 打ち合わせの合間に夕食をとる。「子どもっぽくて恥ずかしいんですが…カレーとハンバーグは好きでよく食べます」。
22:00 打ち合わせを終えて帰宅。
23:00 就寝。

off

12:00 起床。朝早く目が覚めていても、昼ごろまでゴロゴロしている。
13:00 普段できていない家事を片づける。掃除などは休みの日に入念に。
15:00 好きな映画を見る。「音楽はすごくエネルギーを使って聴いてしまうので、なるべく流さないようにしています(笑)」。
18:00 夕食。「得意料理って言われるとあまり思い当たらないのですが…カレーは自分でもよく作ります」。
19:00 特に何をするわけでもなく、物思いにふける。「休みの日は、完全にオフの状態でいたくて。普段はインプットの量が多いので、なるべく頭をリラックスさせたいなと思っています」。
23:00 就寝。

 

取材・文/西山武志 撮影/刑部友康


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